センターニュース No.64

(発行・2007/5/9)「電話相談を受けて」より転載

薬物を使われた被害

近年、睡眠薬などの薬物を使われる被害が目だってきました。薬物を飲み物などに混ぜられると、被害者はある時点でぱったりと記憶が途絶え、気がついたときは何が起きたのか、何をされたのかまったく覚えがないという状態に襲われます。それでも自分の様子や体調から、直感的に何かがおかしいと感じます。後になって落ち着いて考えたとき、あのとき飲みつぶれるような量は飲んでいなかったのにとか、自分はアルコールに強いので酔って意識を失うようなことは一度もないのにどうして、という疑問が湧き、薬物に疑いを持ったり気づいたりします。

 多くの場合被害者は、覚えのない空白の時間に起きたことを、加害者に問いただして事実を知ろうとします。しかし薬物を準備し犯罪を実行するような男が、聞かれたからといって白状するはずもなく、介抱してやっただけだとか、あるいはお互いに合意の上でセックスをしただけだなどと言いつのるのが関の山です。犯行の様子を写真やビデオに記録していることがあります。それをもとに被害者に脅しをかけることもあります。

 こうした被害が起きる背景には、睡眠薬などの薬物が誰でも容易に手に入る社会状況があります。医者に行けば簡単に処方してもらえるほか、インターネットでも買えます。ネット上では薬物の知識や犯罪の手口の情報が飛び交い、気軽な実行を煽っています。

 薬物を使うような犯行は特別な男のすることで、自分の周りにはそんな男はいないだろうと思っている女性がほとんどですが、現実は女性たちの想像をはるかに超えています。現実に沿った認識をもとに考えることが大事です。この前会ったときは大丈夫でも次も同じとは限りません。他の人が一緒でも、酔って朦朧としているのか薬物のせいなのか傍目にはわかりません。

 使う薬物が錠剤を粉にしたものであれば、きれいに溶けきることはないため、グラスの中の異物や底の沈殿物を確認する習慣をつけることも役立つでしょう。また、もし薬物の使用が疑われる事態に直面したとき、告訴する意思があれば、すぐに(なるべく飲んでから24時間以内に)尿検査をすることで薬物の有無を調べることができます。検査は、性被害のための証拠採取キットの用意があるはずの警察に直接行くのが早いでしょう。

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