センターニュース No.61

(発行・2006/4/15)「電話相談を受けて」より転載

自分のために決める

被害にあったらどうするかというとき、その反応は様々ですが、とにかく警察へ行く、あるいは、とにかく弁護士に相談する、という人がいます。こうした行動の選択は、いずれにしてもこれから会うはずの警察や弁護士に対して、一定の信頼感を持っていることを意味します。警察には正義があると、多くの善良な人々は漠然と信じていますし、弁護士とは被害にあった相談者の側に立って話を聞き、相談者の利益のためにその専門知識を提供してくれるものだと想像しています。

 警察あるいは弁護士のところに行ったとき、被害者が抱える「ひどい目にあった」というストレートな憤りや打撃が、そのまま正当に受け止められることが、本来あるべき当然の対応です。もちろんそのように扱われて進んでいく事件もあるでしょう。しかし、必ずしもそうとばかりはいえない事態も多くあります。訪れた警察署で、そんなのは事件にならないと一蹴されたり、相談した弁護士に、あなたにも落ち度があるからムリだと断られたりなどということは珍しくありません。信頼と期待を持って行動した被害者は、この予期せぬことで大きなショックを受け、二重の打撃を負います。

 警察や弁護士はこうあるべきというのは大切なことですが、しかし今現在被害を受け、どう行動するかというところに立たされている女性にとって、理想的状況の出現まで待つ時間の余裕はありません。今必要なのは、良い悪いとは別の次元で、現実を現実をとして認識すること、そして、その上で考えることです。自分にとっての利益を考え、自分を守るために必要な選択をすることは、何物にも優先します。

 警察官も弁護士も裁判官も、多くは性被害に対しては偏見を持ち、男の論理で身構えています。そうした中へ飛び込んでいくのであれば、漠然と受身でいては傷つけられるばかりです。状況に対して男の論理で決め付けられたとき、そういう話ではないのだと、あなたは女の事実で状況を組立て直す必要があります。想像と違う対応を受けたとき、その落差に打撃を受け、エネルギーを奪われてしまうのは避けたいことです。また、こうした現実の壁に対して、力を傾けて戦うのも、身体の向きを変えるのも、どちらも自分のために決めればよく、何を選んでもそれは最良の選択です。

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