センターニュース No.56

(発行・2004/8/15)「電話相談を受けて」より転載

自分のための選択

 被害にあったのですがどうしたらいいでしょうか…と、答を求められることがあります。「こうすればいい」という答が何かあるはずだと、期待することもあるかもしれません。しかし、被害にあったらこうしたらいいとか、こうすべきというような、決まったものはありません。

 センターにできることは、話を聞くことと、必要な情報を提供しながら相談者と一緒に考えることです。
どうするのがいいのかは、それぞれの状況で違うものです。
はっきりしていることは、被害者は何をしてもいいし、何もしなくてもいいということです。
いずれの場合も、自分のために、自分の気持ちに沿って決めることが大事です。

 一般に、誰かに被害を打ち明けたとき、こうしたらいいとか、こうしなさいと言われることはよくあります。その内容が、本人の気持ちに合っているときは、助けや力になりますが、そうでないときは、指図や圧力になってしまいます。

 例えば、被害にあったら病院へ行けばいいと言われた場合、緊急な対処を要するときは別として、何のために行くのかがはっきりしないうちに行っても、本人の利益に繋がりません。性感染症の心配に対しては、検査には適切な時期がありますので、早ければいいというわけではありません。訴える意思がある場合では、診断書を取っておくことは有益ですが、そうした対応は、現在のところその場の医療者の考え方に左右されるため、病院によってまちまちです。病院へは、プライバシーを話す負担についてと、自分が何を必要としているのかについて、ゆっくり考えた上で行くのがいいでしょう。

 被害にあったら警察に行ったほうがいいと、助言されることもあります。訴えたいと思う場合には、背中を押してもらう効果がありますが、そうでない場合は、迷ったり無理をしたりして悩みが増えます。警察に行けば犯人を罰してくれるはずというイメージが、世の中にあるのはたしかです。しかし、性暴力の被害は、まず、警察官が考える「正当」な被害者であるか否かの点検にさらされますから、それに対応する体力・気力が必要になります。

 何かをするのもしないのも、現実と直面するのは被害者自身です。エネルギーを有効に使えるよう、自分自身で納得して選択できることが大切です。

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