センターニュース No.55

(発行・2004/5/15)「電話相談を受けて」より転載

直接交渉での賠償請求

被害に対して、被害者と加害者が直接交渉をすることにより、示談という形で決着をつけることがあります。 

 示談にするということは、加害者が被害者に、双方が合意した額の損害賠償金を支払い、被害者は以後事件に関しては責任を問わないことを約束するもので、民法上の和解契約に当ります。これは、損害賠償を請求したい場合、民事裁判に訴えるよりも、時間や労力の面で、被害者の負担は少なくてすむ利点があります。

 こうした直接交渉は、被害者側が弁護士を代理人に立てるなどして行動を起こすこともあるでしょうし、加害者側が話をもちかけてくる場合もあるでしょう。(警察に告訴後、示談をもちかけられた場合については、ニュース41号に掲載の『告訴後「示談」をもちかけられたら』を参照してください。)

 いずれの場合でも、示談は、損害賠償金の額の決定が交渉の中心となりますから、それが一体、いくらならいいのか、あるいは、いわゆる相場というものがあるのかどうかと、被害者は悩まされます。被害者にとっては、いかなる高額な金額であっても、それで気 が済むという問題ではないことは言うまでもありません。そうした中で、実際的な賠償の額については、被害者の気持ちの他に、様々な要素が影響してきます。例えば、加害者の贖罪(しょくざい)意識の度合や、訴えられたくないなど、示談の成立を必要とする事情がどれだけあるかや、現実的な支払い能力(収入や資産状況)などです。また、直接交渉と同一には考えられませんが、参考になるものとして、新聞等に報じられる性暴力被害の民事裁判の判決があります。勝訴のときの賠償額は、数十万から数百万の単位が比較的多く見受けられます。

 示談書を取り交わすときは、賠償金は示談成立と引き換えに全額を受け取る形にするのが最良の方法です。そうでないと、後で支払いが約束どおりに行なわれない場合、示談書には強制力がないため、支払わせるのには改めて裁判を起こさなければなりません。

 もし、やむをえず分割に応じる場合は、示談書の作成は公証役場に行き、公正証書にしておきます。そうすると支払いが不履行のときには、裁判をしなくても強制執行が可能になります。

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