センターニュース No.51

(発行・2002/12/15)「電話相談を受けて」より転載

被害者支援とは

いろいろな地域の女性たちから、被害者のために何かをしたいがセンターは東京にしかないのかとか、性暴力の問題に取り組み行動を起こしたいという思いを伝えられることがあります。こうした声を聞くことは、大きな喜びです。
 ところで、強姦や性暴力の問題の解決に対して、私たち女性にできることは、何か特別な行動をすることばかりではありません。やれることはたくさんあります。一番基本的で有効な行動があります。それは、女性たち一人ひとりが、日常の中で、男(加害者)に絶対荷担しないことです。少なくとも、女性が女性(被害者)の足をひっぱらないことです。
 例えば、最近は痴漢の冤罪問題が騒がれています。裁判で有罪になっても「自分はやっていない。冤罪だ」と言い張る男が現れると、見てきたようにそれを信じて、冤罪だ、気の毒だと騒ぎ出すのは、男だけではなく、残念ながら女性の声も混じっています。これは、いかにも公平中立な態度のつもりでも、実際には女性が、同じ女性の被害者を踏みつぶして、痴漢の男たちを応援していることです。男たちにとってこれほど有利で頼もしいことはありません。女性たちが決してこのような立場に立たないことが大切です。あらためて何かをしなくても、加害者に利用されないために『何もしないこと』が、大きな被害者支援に繋がります。
 性犯罪で捕まった男に対して、地域や周囲などで助命嘆願の署名運動が起きることがあります。そうしたとき、それには絶対加わらないと決めることも、女性が女性のためにできる大事な選択です。これは、実際直面したとき、さまざまな社会的しがらみや、拒否することで生じるかもしれない身近な不利益を考えると、大きな決断を要することかもしれません。しかし、こうした一つ一つの個人の行動が、問題の根を揺るがす力になります。
 強姦や性暴力の問題にとって、中立という立場はありえないのです。被害者の立場か、加害者の立場しかありません。女性たち一人ひとりが、被害の問題を女性である自分たち全体の問題として捉え、百パーセント女性の側に立つことができれば、女性を取り巻く状況は確実に変わります。

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