センターニュースNo.44

(発行・2000/8/15)「電話相談を受けて」より転載

救援と救済の違い

ときどき、東京・強姦救援センターのことを、東京・強姦救済センターと呼ばれて、居心地の悪さを感じることがあります。この「救援」と「救済」は、しばしば同じように使われていますが違いもあります。

どちらかというと救済には力のある人が困っている人を救うといった感じがあります。あるいは、持てる人が持たぬ人を救うというような、立場の上の者が、下の者に何かをしてあげるというイメージがあります。 しかし、強姦の問題は、女性全体の問題です。被害を訴えた女性だけの問題ではありません。つまり、被害にあった人を、そうでない人が救うということではないのです。

強姦は女性蔑視を基盤にした犯罪です。個人の問題ではなく、女だから受けた被害なのです。それは被害者の人権が侵害されたとのと同時に、女性全体への侮辱でもあるのです。ところが、ともすれば強姦を被害者だけの問題にしがちです。その延長線上で、救援も救済も同じ意味に使われているのです。

救援の基本は救援する者と受ける者はどちらも対等で、同じ立場にいることから出発します。女性であるならこの強姦の問題では、誰もが等しく被害を受けています。上から下へ、救ってあげる人と救ってもらう人という関係は生まれようがないなです。

しかし、「わたしは被害にあっていないけど、あなたは大変ね」という気持ちがあるとしたら、被害者との共通の立場は見えなくなり、他人事になってしまいます。気持ちの上では他人事にできても、女性蔑視の現実は何も変わりません。

すべての女性たちが、強姦の問題に対して共通の立場に立てたら、被害者を取り巻く状況は変わるでしょう。例えば人種差別の問題では、その人種の一人が蔑視され差別を受けたとき、同じ人種の人たちは、それはすぐ自分たち全員への差別だと分かります。他人事ではすまされないのです。同じように、一人の女性の被害を女性全体の問題として受け止め、共通の立場に立つことが救援の基本です。センターが救済ではなく、救援と表している理由がここにあります。

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