センターニュース No.40

(発行・1999/4/15)「電話相談を受けて」より転載

被害者像を押しつけない

警察に性被害の相談窓口や性犯罪捜査係が設置されたなどのニュースとともに、強姦の実態とか被害者の声といった内容の記事も目にするようになりました。

それらの多くは、被害者が心の傷を受けたことにより、「殻に閉じこもり、人間不信に陥って、これまでの生活が続けられなくなる」ことなどを挙げています。そして、そのような状態の被害者が、周囲の励ましなどにより「勇気を持って」相談し、「第二の被害者を出さないためにも」との思いから「心の傷を乗り越えて」告訴に踏み切ったという内容が少なくありません。

 こうした記事の中には、被害者とはこういうもの、被害にあったらこうすべきという固定されたイメージがあります。しかし、被害者の中には、何事もなかったように振る舞うことで精神のバランスを保ち、今まで通りの生活を続けようとする人も大勢います。そのような人は、周囲から見ると強姦の被害者像から外れることになり、「たいした被害ではなかったのでは」とか、「本当は強姦ではなかったのではないか」とさえ思われがちです。

 あるべき被害者像の典型が「被害にあったら、泣き寝入りをしないで勇気を出して訴えましょう」というものです。しかし、社会には強姦に対する根強い偏見があり、捜査機関や司法の場も被害者への理解が決して十分とはいえない中で、「勇気を出して訴えましょう」というのは、無責任な押しつけです。

 被害者に対しての十分な配慮と、正当な対応が保証されない現状は不問のまま、告訴しないのを「泣き寝入り」と決めつけるのも、責任のすり替えにほかなりません。さらに、「第二の被害者を出さないため」という大義名分を出して告訴するよう勧めるのは、圧力をかけることとなり、それは筋違いです。問われるべきは加害者であり、この状況を許している社会そのものです。

 被害者像にとらわれていると、被害が解らないばかりか、被害者に責任をすり替えたり、圧力をかけることになります。