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センターニュース No.62

(発行・2006/10/15)より転載

被害をなくすためにできること

 メディアなどで「女性が性被害にあわないために」というテーマがしばしば取り上げられますが、センターにも取材の申込みがくることがあります。強姦救援センターなら、女性が被害にあわない特別な方法を研究しているはずだと思うのかもしれません。残念ながら「被害にあわない方法などない」というのがセンターの答えです。

 ひとつだけはっきりしていることは「被害は男のいるところでだけ起きる」ということです。となれば、絶対に男には近づかず、自分の存在を男に認識されないようにするということができれば、理論的には被害にあわずにすみます。しかし、そんなことはおよそ不可能です。

 女性が被害にあわないためにとして昔からよく言われているのは、夜遅く出歩いてはいけないとか、露出の多い派手な服装はよしたほうがよいなど、挙げてみれば全てが女性への禁止事項です。しかし、被害の起きるのは夜遅くに限ったことではありませんし、服装とは無関係に犯行は行なわれています。つまり仮に女性が、吹聴されている禁止事項を守ったとしても、被害は起き続けます。なぜ被害が起き続けるのかといえば、女性の行動を規制すれば被害が起きなくなるという考え方そのものが、大きく間違っているからに他なりません。間違いを知り、被害の原因を正しく捉えれば、被害の起きない方法は目の前にあります。

被害はなくすことができる

 被害をなくすため、減らすためにできることはいくらでもあります。

 まず、強姦をする者がいなければ強姦被害は起きず、痴漢をする者がいなければ痴漢被害は起きないという、この単純な事実を社会が認めることです。
被害の原因は加害者です。ところが、被害が起きるのは、女性が被害にあわないよう努力しなかったためだとする論理が、社会常識として流布されています。捻じれた「常識」は、あたかも自然の摂理のように、人々の無意識の領域にまで浸透しています。強姦神話が吹聴され、被害者は責めを負わされ、犯行は容認され助長されています。この間違った「常識」をリセットすれば、被害をなくすためにできることがはっきりしてきます。

 まず始めに、男は女性に性被害を及ぼしてはならないという、当り前の社会規範を、当り前に築くことです。

「痴漢出没、注意!」の看板をよく見ますが、痴漢は熊ではないのですから、注意を呼びかける先が間違っています。「痴漢は逮捕、問答無用!」とすれば社会の姿勢もはっきりします。

 女性の行動に責任を被せてきたエネルギーを、女性の安全が守られる環境のために社会全体が協力するということに振り向けるなら、少なくとも性犯罪の助長は止められます。たとえば現在、社会が日々ばらまいているのは、強姦や痴漢を男の楽しみだと肯定してそそのかす、おびただしい量の出版物であり映像です。それらはポルノと呼ばれるものに限らず、誰でも見られるインターネットのサイトやTV番組、身の回りにある雑誌、漫画本なども例外ではありません。女は強姦されるのを待っているとか、男に身体を触られるのを喜んでいるとか、肌を出した服装はオレを誘っているとか、女を思いどおりに支配するのは男らしさの証だなどというメッセージを、子どもの頃から受けて育つ男たちが、女性にどういう認識を持つか、言わずとも知れています。その種のメッセージが含まれるものを検証し直し、間違った認識を正すための根本的な対策に取組めば、際限もなく犯罪の実行がそそのかされる状況は変わるはずです。

電車の「痴漢撲滅」運動

 駅には最近「痴漢は犯罪です」と教えるポスターが張られ始めました。これまで社会は痴漢を犯罪とは思っていなかったことを改めて知らせてくれる風景ですが、それで起きた変化は何かというと、男たちによる冤罪が問題だという大騒ぎです。女性が間違えたりウソを言われたりしたらたまったものじゃないと、女性を標的に攻撃の開始です。しかし、女性に矛先を向けるのは筋違いです。問題は自分が冤罪になるのを身近に感じるほど痴漢犯罪が起きているという事実です。冤罪が心配なら、冤罪の原因である痴漢犯のほうを標的にし、攻撃すればいいことです。男たちが皆で痴漢を見張り合えば、痴漢は減り、冤罪の心配も減ります。

 また、痴漢逮捕の協力者には、協力シールを贈呈したり、手続きなどに要する負担の軽減や、職場が遅刻扱いにならない条例を作るなど、行政も本気を見せた対策を社会にアピールすべきです。やっていないという言い逃れには、痴漢の手についた極小の繊維を鑑定するという「微物鑑定」の適用を進めるなど、科学的捜査に力を注ぐ姿勢を徹底すれば、言い逃れの道を封じ、抑止力も持つでしょう。性犯罪をなくすには、問題を正しく認識した上での適切な対策が重要です。

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